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「ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術」について
2025.01.21
診療について
産業医科大学泌尿器科では、経尿道的膀胱腫瘍切除術では治療が不十分である筋層浸潤性膀胱がんに対して、従来行っていた開腹膀胱全摘除術と腹腔鏡下膀胱全摘除術に加え、手術支援ロボット「ダビンチ(daVinci)」の最新機種であるdaVinci Xiを用いた、
「ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術」を2019年から標準治療として行っています。
なお、膀胱全摘除術は男性の場合、前立腺精嚢(+尿道)を合併切除、女性の場合、子宮と膣の半分(+尿道、+両側卵巣)を合併切除する術式で、臓器摘出後は、尿路変向術(回腸導管や尿管皮膚瘻といった尿路ストーマや、小腸利用代用膀胱といった新膀胱を造設)も行うため、泌尿器科領域において最も手術侵襲が高い術式のひとつです。
当院では、より患者さんの負担を軽減するために、これらの尿路変向においてもロボット支援手術(完全体腔内尿路変向術)を2020年から積極的に行っています。
ロボット支援手術の概要は下記の前立腺全摘除術の「ロボット支援手術とは?」を参照ください。
ロボット支援膀胱全摘除術のメリット
- 鮮明な拡大視野で手術操作が可能なため、骨盤内の豊富な血流を有する臓器に対して、剥離・切除・止血操作を丁寧に行うことができます。
- 開腹手術の場合、1000~2000mlの出血を来すことが多く、高率に輸血を要していましたが、ロボット支援手術では術中出血量が少なく、輸血の確率が低くなります。
- 従来の手術に比べて、直腸などの他臓器損傷、術後感染症、腸閉塞などの合併症の可能性が低減することが期待されます。
- 手術後の回復が早く、早期に食事をとることができます。手術後1~3日目には、ご自身で歩行することができます。入院期間が短くなるため、早期の社会復帰が期待できます。また、産業医科大学泌尿器科病棟では、皮膚・排泄ケア認定看護師をはじめとした尿路ストーマに習熟したスタッフによる専門的なケアを行う体制を整備しており、尿路ストーマ管理自立支援に向けてのバックアップも充実しています。
- 腹腔鏡下手術もロボット支援腹腔鏡下手術同様に低侵襲な手術ですが、一方で難易度が高く高度な技術を要する手術でもありました。ロボット支援下手術では、より鮮明かつ拡大された3D画像による正確な位置把握が可能です。さらに、人の手指以上に器用な動きが可能なロボットアームを用いることにより、従来の腹腔鏡下手術よりも精度の高い繊細な手術が可能です。
- 下図に開腹手術と腹腔鏡下手術の皮膚の傷を示します。ロボット手術は腹腔鏡下手術の傷の大きさそのままに、術後の痛みも少ないです。

よくある質問
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- ロボット支援手術は危険ではないのですか?
- A1. 従来の開腹手術や腹腔鏡下手術の膀胱全摘除術より、ロボット支援手術の方がより高度で精密な手術操作が可能とされ、手術者の負担も軽減するとされています。医師をサポートするのがロボットの役割で、ロボット自身が勝手に動くわけではありません。医師がロボットを活用し、精緻な手術を行うとお考え下さい。最近では、ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術の治療成績が多数報告されるようになりました。長期成績はまだでていませんが、開腹手術と比べ、再発率と生存期間に差はない結果が示されています。
なお、開腹手術の既往がある方や、おなかの中の高度癒着が予想される方は、開腹手術を選択した方が良い場合もあります。
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- 高額な費用が掛かりますか?
- A2. 膀胱がんに対して、2018年4月から健康保険が適用となりました。また、高額療養費の対象となります。
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- 膀胱がんであればだれでもロボット手術支援を受けられますか?
- A3. 転移を認めない局所の筋層浸潤性膀胱がんの方が適応となります。腹部手術の既往や、がんの進行の程度によっては開腹手術や腹腔鏡手術を選択した方が良い場合もあります。また、併存疾患や全身状態に応じて、膀胱温存療法を選択する場合もあります(当院では放射線併用動注化学療法を行っています)。
さいごに
私たちは、低侵襲な治療から進行膀胱がんの高度な拡大手術まで、病める膀胱がん患者さんそれぞれに応じた最善の治療を提供いたします。