Newsお知らせ
1997 年3月~2001年2月の間に産業医大病院泌尿器科を受診し、前立腺癌に関与する遺伝子多型の研究に同意し、DNAの提供をいただきました患者さんへのお知らせ
当院では、以下の臨床研究を実施しております。この研究は、通常の診療で得
られた情報の記録に基づき実施する研究です。このような研究は、「人を対象と
する医学系研究に関する倫理指針(西暦2014年12月22日制定 西暦2017年
2 月28日一部改正)」により、対象となる患者さんのお一人おひとりから直接同
意を得るのではなく、研究内容の情報を公開するとともに、参加拒否の機会を保
障することとされています。この研究に関するお問い合わせ、また、ご自身の診
療情報が利用されることを了解されない場合は、以下の問い合わせ先にご連絡
ください。利用の拒否を申し出られても何ら不利益を被ることはありません。
1. 研究課題名
日本人の進行性前立腺癌における DNA 修復遺伝子異常の頻度に関する
研究
2.研究期間 2019年4月 ~ 2021年12月
3. 研究機関 産業医科大学病院
4. 実施責任者 医学部泌尿器科学 教授 藤本直浩
5.研究の目的と意義
前立腺がんは遺伝的要因が強いがんの一つで、父親が前立腺がんだと子供が
将来前立腺がんに罹患するリスクは前立腺がんの家族歴のない人と比較する
と2倍になると言われています。最近、白人を中心に、前立腺がん罹患と強く
関係する遺伝子が複数報告されました。これらの遺伝子は DNA が損傷を受け
た際にそれを修復する機能と関連がある遺伝子(DNA修復遺伝子)が多く、これ
らの遺伝子に異常があると、前立腺がんに罹患するリスクがそうでない人の
数倍~数十倍になると言われています。また、これらの遺伝子に変異がある確
率は一般人口では 1-2%に過ぎませんが、転移を伴う前立腺がん患者では 10%
程度の方でこれらの遺伝子異常がみつかるとの報告もあります。さらに、最
近、まだ前立腺がんに対して承認されていない薬で DNA 修復遺伝子のうちの
一部に変異がある患者さんにおいて特に効果を期待できる薬剤が開発され、
現在、国際的にその有効性・安全性を調べる治験が進行中です。しかし、日本
人の進行性前立腺がん患者さんにおいてこういった遺伝子異常がどの程度の
割合で見つかるのか、また、これらの遺伝子異常をもった患者さんの前立腺が
んがその他の患者さんの前立腺がんと異なるのかなどまだわかっていません。
そこで本研究では現在、転移性前立腺癌もしくはホルモン治療が効かなくな
った去勢抵抗性前立腺癌で治療を受けている患者さんから血液を提供してい
ただき、そのDNAを用いて代表的なDNA修復遺伝子に異常がないか調べます。
そして日本人の進行性前立腺がん患者さんにおける DNA 修復遺伝子異常のあ
る患者さんの割合や、それらの遺伝子異常を持つ方の前立腺がんの特徴を調
べることを目的とします。将来的に本研究の成果によって前立腺がんに罹患
するリスクが特に高い人では検診間隔をより密にしたり、DNA修復遺伝子異常
の有無を元に治療方針を決める個別化医療を促進し同じように前立腺がんに
苦しむ患者さんを助けたりできるようになるという意義があります。
6.研究の方法
泌尿器科では、1997年3月~2001年2月の間に当科で行っておりました立腺
癌に関与する遺伝子多型の研究として提供していただいた血液から抽出した
DNA を保存しております。そのDNAの一部を理化学研究所生命科学センターへ
送付し、27個のDNA修復関連遺伝子(APC, ATM, BARD1, BMPR1A, BRCA1,
BRCA2, BRIP1, CDH1, CDK4, CDKN2A, CHEK2, EPCAM, HOXB13, MLH1,
MSH2, MSH6, MUTYH, NBN, NF1, PALB2, PMS2, PTEN, RAD51C, RAD51D,
SMAD4, STK11, TP53)について遺伝子変異の有無を次世代シーケンサーと
いう機械を使って解析します。同時に、これまでの臨床経過についても過去の
カルテから情報を収集し、最終的に各 DNA 修復遺伝子に異常があった症例と
なかった症例で予後や治療反応性などに違いがないか解析します。
京都大学、秋田大学、九州大学、宮崎大学の泌尿器科で集められたDNAも同様
に解析し、すべての結果をまとめて研究結果として学会や論文に報告予定で
す。
研究期間は研究開始より2年間で、解析結果保持期間は10年間です。
《遺伝子解析について》
遺伝子の解析は次世代シーケンサーという最新の遺伝子解析装置を用いて理
化学研究所生命医科学センター内で行います。理化学研究所生命医科学センタ
ーには匿名化された検体のみを送付し、診療情報を含む個人情報は一切開示す
ることはありません。余剰検体は提供した各機関に返却されます。遺伝子解析
結果は理化学研究所生命医科学センターおよび京都大学泌尿器科で保管しま
すが、遺伝子解析データと患者情報の対応表は採血をした各施設でのみ厳重に
保管されます。
7.個人情報の取り扱い(保管と廃棄に関する事項及び利用の拒否の申し出が
あった場合の対応についてもご記入ください。)
診療情報は匿名化したのちに代表研究施設である京都大学大学院医学研究
科泌尿器科学教室(代表研究者 小川 修教授)に送付します。同教室でも個
人情報の管理担当医が厳重に保管します。
検体は、匿名化されたまま採血を行った各機関で厳重に保存され、原則とし
て本研究のために使用されます。もし同意していただければ、将来の研究のた
めの貴重な資源として、研究終了後も保管させていただきます。この場合も、
誰の検体かわからないようにしたまま、検体を使い切るまで保管します。10年
間保管した後には検体を廃棄しますが、その場合は、匿名のまま、密封容器に
廃棄あるいは焼却処分します。その後は、個人情報との対応表を破棄し、解析
結果を臨床情報のみ確認できる形で半永久的に保存します。
将来、検体を医学研究に用いる場合には、改めて研究計画書を提出し、臨床研
究審査委員会の承認を受けます。
本研究に該当する方で、ご自身の生体試料等の使用を希望されない方は、
下記担当医師へお申し出下さい。その場合、生体試料および個人情報は廃棄
いたします。また、不利益を受けることは全くありません。
8.問い合わせ先
産業医科大学医学部泌尿器科 教授 藤本直浩
〒807-8555
北九州市八幡西区医生ヶ丘1-1
電話 093-691-7446 ファックス 093-603-8724
9.その他
この研究に関わる費用の負担はありません。また研究参加の謝礼もありま
せん。
この研究の成果に基づいて、特許権などの知的財産権が生ずる可能性が
ありますが、その権利は主任研究者および研究協力者に帰属し、あなたには
帰属しません。
本研究の利害関係については、産業医科大学利益相反委員会の承認を
得ており、公正性を保ちます。